カッコウはコンピュータに卵を産む(原著:THE CUCKOO'S EGG)の感想

この本はコンピュータの管理責任者になったばかりの著者が
自分のコンピュータに進入してきたハッカーを
追跡する様子を描いたノンフィクション小説である。


小説としての内容をメモしておこう。

主人公クリス(著者は)は天文学を研究していたが、
研究の仕事が無くなってしまった。
食べていくためにしょうがなく
バークレーのコンピュータセンターの管理者の職に就く。

直任してすぐ、会計プログラムのバグ探しを任される。
しかし、クリスはプログラムにバグが無いことを確認し、
原因は別にあることに気付く。
ここから、クリスは原因がハッカーにあることをつきとめ、
追跡に乗り出す。

ここから、周囲の人間やエネルギー省、TYMNET、電話局、
FBI、CIA、NSA、アメリカ空軍、国防企業、ペンタゴンなどなど、
様々な組織や人間を巻き込みながらハッカーの追跡は進んでいく。

ハッカーの実際の手口とクリスの対処する様子を
当時の詳細なメモを元に記してあるせいか、
その場の様子がひしひしと伝わってきて、とても臨場感がある。

上巻は追跡途中で終わり。
下巻はハッカーを捕まえる様子と後日談が書かれている。
後日談には事件の真相についてと、
ネットワークワームとの戦いについて書かれている。


読み物としての感想を書こう。

ハッカーを追跡する部分は次の展開が気になってワクワクするのだが、
下巻の中盤をすぎるとイライラしてくる。
というのも、
ハッカーに関しての情報が著者に入ってこなくてイライラする様子が
本を読んでる私にも伝わってくるからだ。

コンピュータのこと、とりわけUnix系のOSやEmacs,viについて
少しでも知識がある人なら、とてもおもしろい本であると思う。
著者(と訳者)はコンピュータの知識の無い人を対象に書いているから、
知識が無くても問題ないが、知識があれば断然おもしろい。


セキュリティの面から感想を書こう。

この本の内容はとても説得力があり、
下手な教授のセキュリティに関する授業より優れていると感じた。
セキュリティやネットワークについて感心がない
情報系の学部生の方にはおすすめ。

インターネットの草分けであるARPANETやBSDのバークレー校が
でてくるだけでも反応してしまうコンピュータ史が好きな私には
とても興味をそそられる本だった。


教訓

ユーザ名とパスワードは違うものにする。
初期状態のユーザ名とパスワードは必ず変更する。
セキュリティホールはできるだけ埋める。
安全な暗号アルゴリズムを使う。
ハッカーに侵入されたらログを確認し、
必要があればパスワードは必ず全て変更する。
トロイの木馬を仕掛けられた様子があれば、
除去するか、データを破棄すべし(バックアップは重要)。